Weekly北朝鮮『労働新聞』
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二度目の進水式で新型駆逐艦を「姜健」と命名、同クラス以上を毎年2隻建造の方針(2025年6月8日~6月14日)

執筆者:礒﨑敦仁 2025年6月16日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
二度目の進水式は成功したが、前回の失敗について金正恩国務委員長は演説で「到底許すことのできない深刻な犯罪行為」であると語った[「姜健」と命名された「崔賢」級駆逐艦の2番艦=2025年6月12日、北朝鮮・羅津](C)AFP=時事
進水式で横倒しになった「崔賢」級駆逐艦の2番艦が修復されあらためて進水、来年から同クラス以上の艦を2隻ずつ建造するという。健在が確認された趙甬元は紹介順も変化なし。6月12日の「ロシアの日」に際して金正恩がプーチン大統領に宛てた祝電では、中国に対しても使っていない「兄弟国家」という言葉でロシアを表現した。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】
 

 5月21日に清津(チョンジン)で横倒しになった新型駆逐艦の進水式があらためて羅津(ラジン)造船所で挙行された。6月13日付は5ページを使って記念式の様子とそこで行われた金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の演説を紹介した。夜には華やかな記念公演も催され、一連のイベントには金正恩の娘も同席している。

 金正恩は朝鮮労働党中央軍事委員会の命令として、この5000トン級駆逐艦に朝鮮人民軍の初代総参謀長の名を冠して「姜健(カン・ゴン)」号と命名した。また、4月25日に南浦(ナンポ)で進水した駆逐艦と同様に「崔賢(チェ・ヒョン)」級であると定め、来年からこのクラス以上の駆逐艦を毎年2隻ずつ建造する方針が示された。

 清津造船所での進水失敗については、今回の演説においても、「国家の尊威と自尊心を一瞬にして失墜させた到底許すことのできない深刻な犯罪行為」であるとされた。また、「現在このような無責任と非科学性による人災、災厄は、鉄道と交通、電力部門、建設現場を問わず各部門、分野でも日常的に起きている」と指摘された。

 6月14日付は、金正恩が重要軍需工業企業所を現地指導したことを報じた。羅津造船所での進水式に続き、複数の掲載写真から娘の同行も確認できる。同行者としてその名が報じられたのは、「党中央委員会指導幹部」の趙甬元(チョ・ヨンウォン)、金徳訓(キム・ドックン)、李煕用(リ・ヒヨン)らのほか、努光鉄(ノ・グヮンチョル)国防相、さらには崔善姫(チェ・ソニ)外相などである。趙甬元の健在は既に確認されていたが、金徳訓の名と同時に『労働新聞』に出現したのは3月1日付以来であり、紹介順に変化がないことも判明した。

 一方、崔善姫の現地指導同行は異例であり、大量の兵器がロシアに向けて輸出されていることを想起させる。崔善姫は第1外務次官時代の2019年10月に金剛山(クムガンサン)観光地区への現地指導に同行したことがある。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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